COLUMN
今年から来年にかけて資産税及びその周辺領域で以下の改正が行われます。これにより個人の財産管理や生前贈与の管理等、税理士の富裕層への関与のアプローチが変化することを感じています。
1.2023年からの改正項目
(1)財産債務調書について従来の提出義務者(所得2千万円超、かつ保有資産時価3億円以上)に加えて保有資産時価10億円以上の方も対象となる
2.2024年からの改正項目
(1)生前贈与加算が現行の3年から7年に延長
(2)相続時精算課税選択者にも年額110万円の基礎控除が認められる
まず、1について、財産債務調書は現在も法定調書ではありますが、従来は任意の提出書類だったこともあり所得税申告書のおまけ的な位置づけととらえている納税者や税理士が多いものと思います。当職も以前はそうでしたが発想を変えて、法的な義務を順守しつつ保有財産を管理するツールとして積極的に活用することをお勧めしています。会社はP/LとB/Sを作成するのが当たり前ですが、個人はP/L(所得税申告書)のみというのが考えてみればおかしく、富裕層についてはフローとストック両面から情報を把握することが顧客へのよい提案につながるものと考えています。
次に2ですが、相続時精算課税の適用が増加することが想定されるのと、暦年贈与であっても贈与履歴を時系列で把握する重要性が高まっています。従来、所得税や贈与税の申告業務というと年明けの単発業務の位置づけで申告完了したら1年間は忘れているという感じが一般的と思いますが、より計画的に贈与を行う方とそうでない方の差が開いてきますので税理士としても受け身ではなく積極的に提案をしてきたい所です。
このような発想で物事を考えていくのはプライベートバンカーと同様と考えています。プライベートバンクと称する巷の業者の大半が金融商品や不動産を顧客に売るだけの存在であることに辟易しているわけですが、上記改正によりプライベートバンク業務における税務ノウハウの重要性がさらに高まっていることを考えるとこのマーケットに税理士が注力する実益があると考えています。
なお、法人顧問の社長の確定申告はサービスで行っているようなケースも多く、追加の報酬額について理解頂くのは容易ではありませんが、「お金をどう守るか」、また「お金をどう承継するか」は社長の一番の興味である「お金をどう稼ぐか」と同様に重要なテーマであり、費用をかけただけの効果はあります。
最近よく税理士は企業の参謀にならないと生き残れないなどと言われていますが、当職もまさに富裕層の参謀を目指して日々精進しています。
宮口徹
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