COLUMN
昨日、政府より新型コロナ感染症に係る緊急事態宣言が出されましたが、それに伴う緊急経済対策が閣議決定されました。本文については内閣府のサイトで入手できます。また、税制措置につき、国税については財務省のサイトで、地方税については総務省のサイトで資料が公表されています。
以下、個人事業主や企業に係る財務面の措置について要点を記載します。→以下の記載は筆者の解説ないし私見です。
1.雇用の維持
①緊急対応期間(4月1日~6月30日)について雇用調整助成金の助成率を中小企業9/10、大企業3/4に引き上げる
②非正規雇用労働者も雇用調整助成金の対象に含める
2.資金繰り支援
日本政策投資銀行や商工中金を通じて無利子融資等
3.事業者への支援
事業収入が前年同月比50%以上減少した事業者について中堅・中小企業は200万円、個人事業主は100万円を上限として減少額を給付(「持続化給付金」)
上記給付金は電子申請を原則とするなど可能な限り簡便な手続きとし、給付までの期間を極力短くする
→上記の事業収入は売上高と想定しますが、事業収入減少の具体的な判定月などの情報は現時点では不明です。頂けないよりはよいのですが、中堅企業で200万円ですと金額規模が少なすぎるとの印象は否めません。
4.個人への支援
世帯主の月間収入(20年2月~6月の任意の月)が、①新型コロナウイルス発症前と比べて減少し、かつ年間ベースに引き直して個人住民税非課税水準となる低所得世帯や、②新型コロナウイルス発症前と比べて大幅減少(半減以上)し、かつ年間ベースに引き直して個人住民税非課税水準の2倍以下となる世帯に対して、1世帯当たり30万円(非課税)を給付
→住民税非課税世帯とは単身世帯で年収100万円程度、扶養親族2名で年収200万円程度の世帯なので大部分の会社員は支給要件に該当しません。識者も指摘しているように本件支援の趣旨が不明確であり、支給範囲がかなり狭くなった点は残念に感じます。①は元々かなり年収が低い世帯ですが、②は給与所得者を前提とした場合、退職でもしない限り、月収半減はまずしないと思います(一部歩合給の比率が高い職種を除く)。そうするとコロナを期に退職した方につき非課税の退職手当が国から30万円支給されるイメージの制度となり、本経済対策の主目的である雇用の維持に反する効果を生みかねない側面があります。また、悪用されるリスクもある点(例えば一時的・意図的に無職となって給付金を受領する等)をどう排除するかも課題となります。
5.税制措置
①収入に相当の減少があった事業者の国税・地方税及び社会保険料について、無担保かつ延滞税なしで1年間納付を猶予する特例を創設
→「収入の相当な減少」とは、「令和2年2月から納期限までの一定の期間 (1か月以上)において、収入が前年同期比概ね20%以上減少」です。また、外出自粛の観点からは納付期限と合わせて申告期限も延長してほしいと考えていますが、会計事務所としては早期に取り扱いを公表して頂きたいと思っています。
→法人税の申告について国税庁の取扱いが公表されており、以下のような事情にあれば事前の申請なく期限の延長が認められるとのことです(4月10日追記)。
・体調不良により外出を控えている方がいること
・平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること
・感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
・感染拡大防止のため外出を控えている方がいること
②資本金1億円超10億円以下の企業について生じた欠損金につき法人税等の還付を認める
→現行制度では資本金1億円以下の中小法人のみに法人税の繰戻し還付が認められていますが、当該制度の適用範囲を拡大するものです。なお、法人税「等」とありますが、現行制度を前提とすれば「等」は地方法人税であり住民税や事業税は還付できません。
③厳しい経営環境等にある中小事業者等に対して、令和3年度課税に限り、償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税を1/2又はゼロとする
→「厳しい経営環境等にある中小事業者等」とは「令和2年2月~10月までの任意の3ヵ月間の売上高が、前年の同期間と比べて、①30%以上50%未満減少している者と②50%以上減少している者」になります。①については税額が1/2、②についてはゼロとなります。軽減を受けるためには令和3年1月31日までに認定経営革新等支援機関(当事務所は認定を受けています。)の認定を受けて申告する必要があります。
一日も早い収束を願いつつ、当事務所でもクライアント企業に対して出来る限りの支援を行っていきたいと考えています。
宮口
(2020年4月10日一部内容更新)
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