COLUMN
所長の宮口です。独立してからは非上場企業に関与する度合いがより増えましたが、最近デューデリジェンスなどで粉飾や逆粉飾を発見することが非常に多いです。黒字の企業は税金をセーブするために逆粉飾を、赤字の企業は対銀行や業法の縛りから業績をよく見せるために粉飾をするわけですが、いろいろな手法があり、非常に勉強になります。
粉飾については、減価償却を止める、在庫の払出しを止めるなどのよくある手法から、取引先協力の下、請求書を発行し、売上を上げてから翌期に取り消す、社長が会社への貸付金を免除して売上に混在させるなどの手法がありました。
よくある利益操作手法であるセールスアンドリースバック取引でも、売買処理により利益のかさ上げを狙う一方で、リース会社の協力の下、金融処理にして消費税の非課税取引とする手法も併用するなど、会計の見え方、税金、キャッシュ・フローを総合的に考えていろいろ工夫されている事例にもあたりました。
逆粉飾についても、決算期の異なる取引先に請求書を発行してもらい経費を作った上で、翌期に逆に仕事を受けたことにして売上を作るといった手法がありました。
私はもともと上場企業監査からキャリアをスタートさせましたが、他の会計士同様に、規模が大きすぎて全体像が把握できない、既に監査が入っていて指摘事項が特にない、優秀な経理マンが作成した資料を後追いでなめるような作業といった理由で、やりがいを感じられなかった部分がありました。その点、中小企業は、外部の目が行き届かないことからいろいろな操作が行われていることが多く、監査スキルを磨くうえでも恰好の教材であると思います。
当時は社会人経験もないまま財閥系の巨大企業の会計監査をしていたので、見るべきものが全く見えていませんでしたが、約20年の実務経験により、いろいろな事例を見た結果、嗅覚が発達し、最近はより、ポイントを突いた監査ができるようになったと感じています。また独立したことにより、経営者の肌感覚が少しは分かるようになった気がします。(数百人の雇用を預かる責任や億単位の連帯保証を背負う気持ちまでは想像できませんが。)
いま改めて考えるに事業会社経験者が監査を行った方が何倍も、効果的な監査ができると思いますので、より、事業会社と監査法人の人事交流が進めばよいと思っています。監査法人勤務の方も、公開準備業務など、より、会社(社長や担当者)の立場に立って仕事ができるプロジェクトに関与することが、上場企業監査のクオリティーを上げることにもつながると考えています。
散文失礼いたしました。
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